雑巾

にほんブログ村 ライフスタイルブログ 60代の生き方へ *にほんブログ村に参加中!

雑巾昔、他所のお宅の若奥様を始めた頃の話。

嫁入りの荷物には、自分で縫ったものと母が縫ったもの二種類の雑巾が入っていた。古タオルを縫ったものは私が。古い浴衣をほどいて布オムツ用を取り分けた残りを縫った母の物と。毎日の掃除に使う物だから、たくさんあっても邪魔にならないはずだった。風呂敷に包んだ雑巾は50枚くらいあっただろうか。

実家でも、他の場所でも、雑巾は複数枚使って掃除をしていた。雑巾は使った後綺麗に洗い乾かすために3セットは用意が必要で、それが当たり前だと思っていた。使う時には乾いている雑巾を綺麗な水で絞り、汚れていない面で掃除する。汚れたら洗って使うか、複数枚用意している他の雑巾を使う。それが普通のやり方だった。

若奥様を始めて最初の掃除の時、雑巾バケツと雑巾のありかを姑に尋ねた。

姑が示した場所には、お世辞にも綺麗とは言えない10リットルの青いバケツと、縁にだらしなく掛けてある古タオル1枚があった。バケツには汚れた水まで入っていていた。

雑巾はその古タオルのことらしい。煮染めた様な色の汚い布。これで掃除したら汚れそうだと思った。持参した荷物から雑巾を5枚出して来て使おうとしたら「おかしな事する子だ」と姑に叱責された。雑巾を縫うというのは「糸の無駄遣いに他ならない、自己満足の行為」なのだそうだ。一枚の布のままだと乾くのも早いから清潔だと言う。あの煮染めた変なにおいのする湿った古タオルのどこが清潔なのだ?と、当時の私は思っても口には出さなかった。

嫁に行くというのはこういう事なのかな。漠然と思って口答えはせずに持参した雑巾は荷物に戻した。ぬるぬるするバケツを(寒風吹きさらす外で)洗い、古タオルも何度も洗い、やっと使える様な状態にしたら穴だらけになってしまった。雑巾を使わないうちに駄目にしたとまた姑から叱責された。「雑巾一枚洗えない嫁が来てしまった」なんだそうだ。

穴だらけになった元古タオルを折りたたみ、なんとか掃除をした。掃除の後、バケツも洗い拭いて元古タオルを縁に掛けた。雑巾を干す場所がないので元あったとおりにしたわけだ。しかし、また叱責される。「火の用心にバケツには水を入れておくのが常識だ、そんなことも知らないのか」ということだ。

バケツを洗ったのも水の無駄遣いと言われ、凹んでしまった。今考えると、幼稚な嫁いびりだったのかも。

それでも穴だらけの元古タオルでは、流石に姑も使いづらいと思ったのか、2~3日したら、向こうが透けそうな古タオルがバケツに放り込んであった。今度は穴が開かない様に気をつけて気をつけて使った。でも、一枚の古タオルで掃除するのだからすぐにへたってしまう。駄目になるとまた叱責されるので、拭き掃除するのが恐怖になっていた。

持参した大量の雑巾は実家に持って帰った。嫁の荷物はうちの物という考えらしく、持ち物は細かくチェックされていた為、見るたびに大量の糸を無駄遣いした自己満足な品と言われるのに嫌気がさしたので。

あれから何十年か経った。今は拭き掃除する面積はほんのちょっとだけど、掃除のたびに3枚の手縫いの雑巾を思う存分自由に使っている。まだ下ろしていない雑巾は10枚以上あるが、タオルが古くなってきたらさっさと雑巾に縫ってしまう。年に数回行く墓参りにも必ず雑巾を持参するので沢山あっても困らないし。

やっぱり、雑巾はちゃんと縫われた物の方が私は好き。

にほんブログ村 ライフスタイルブログ 60代の生き方へ




  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA