今週のお仕事は、掛かってくる電話を一生懸命受ける事。
掛かってくる物にも波がありまして、集中する時には『いいかげんにしろーー!』と叫びたくなるくらいだったりする。
今日はいつもよりも忙しかったのだけれど、それでもぽかんと待機時間が出来るわけです。そんなときには平行して出来る他の処理をぼちぼち手掛けるのですが、それほどの時間もない。本当にびみょーな空き加減でありました。
見るとも無しに眺めていて、自分の右手の甲から手首に掛けて、うっすらと白い傷跡がいくつか走っているのに気がつきました。というより、何の傷かは判っているのですが、思い出すと悲しくなるので忘れようとしていた傷跡です。
関東へ嫁入りする時、良い子ちゃんは2ニャンの連れ子を連れて参りました。10才を過ぎたアメショの夫婦です。
この子達は、2回目の家庭を作った時に養子として迎えた子達です。お別れした時に、すったもんだありましたが、なんとか私が彼らを引き取ることに成功しまして、ずっと手元に置いて暮らしていたのでありました。
2番目とお別れした頃、娘猫のほうが妊娠しておりました。2番目は、その妊娠に気がついていなかったのですが、婿猫の去勢手術を行った件で「共有財産の損壊に対する損害賠償」とやら訳のわからない理由をこじつけられまして、生まれた中の1匹を奪われてしまいました。
生まれたのは4匹。ウチ1匹はすぐにお星様になってしまいまして、他所に貰われた子が1匹。手元に残った男の子は、4才になる直前に虹の橋を渡って行ってしまいました。
生まれた子達が、まだ2ヶ月になるかならないかの頃。近所を徘徊していた野良猫が、ベランダの網戸越しに猫娘を見初めたらしく、ある日網戸を破って部屋へ進入してきたのです。
とっさに、野良猫を撃退したのですが、恐怖と子供達を守ろうとする娘猫は、よそ者を撃退した良い子ちゃんも敵だと認識してしまったのです。
唸り声を上げて襲いかかってくる娘猫。まさかそんなことになっているとは思わない良い子ちゃんは、怖がって飛びついてきた娘猫を抱き上げようとして、顔に爪を突き立てられました。もうちょっとずれていたら、失明するくらいの場所。
とっさにかばった腕にも、情け容赦ない爪と牙が刺さります。
一部屋に追い込み、彼女が冷静になるまで2日間。放っておく訳にもいかず、攻撃を避けながら食事と水を運ぶ良い子ちゃんの、腕・足首・腿・背中。無数の傷が刻まれてしまいました。
狂気に駆られた時と同じく、いきなり正気に戻った娘猫。
包帯と絆創膏が沢山貼られた良い子ちゃんの傷が、まさか自分の仕業だとは思ってもいなかった様でした。
あれから20年近く経ちました。ぱっくり開いていた傷は、白いかすかな傷跡となっています。
何時までも良い子ちゃんの側にいるものと思っていたけれど、娘猫は震災の前の年に12才で。婿猫は震災の2年後に13才で虹の橋を渡って行ってしまいました。
電話が鳴る隙を突いて、一瞬彼らと過ごした思い出に浸り、涙が出そうになりました。けっして歳を取って涙腺がゆるんだわけではない・・・・そう思いたいです。