なかなか仕事が見つからない。選り好みしているわけではないが、ないのだ。
色々出来ることはあるが、履歴書に書いたところで何の足しにもならない資格ばかり持っている。煮詰まっている時に、居住地域で資格取得の補助が出ることを知り、『訪問介護員(ホームヘルパー)2級』の養成講座を受けることにした。
足かけ3ヶ月、まじめに受講し無事にヘルパーの認定をもらった。
終了を前に、養成講座も行っている団体が持っている障害者自立支援所の支援員の職に就いた。と言っても支援所へは週に1日、同じ団体が経営しているケアホームの夜勤が1日だけで、正式にヘルパー資格を取得したら訪問介護員としての仕事が入ることになっていた。
訪問介護の初日。初日だけは先輩が一緒に行って、引き継ぎが行われる。しっかりメモを取り次からの一人での仕事に備えた。
ヘルパーの仕事は身体介助と生活介助があり、シビアに料金が異なる。
同じ1時間半の担当時間でも「30分:身体介助・1時間:生活介助」と「1時間:身体介助・30分:生活介助」ではかなりの差が出る。最初から時間通りに行うのは難しいが、そこは一人で行く=新人もベテランも関係ない世界なのでやるしかない。
脊椎損傷で下半身不随の利用者様のおむつ交換を初めてした時。こちらも初めてなら相手も初めての担当で緊張している。神経が断裂しているため全く反応がないと聞いていたのに、おむつ交換時に排泄器が反応した。というより、びっくりする状態になってしまったのだ。これは報告しなければならない!が、早くおむつ交換を済ませねばならない!どっちが先だ!?と焦りつつ、なんとか仕事を終わらせて事務所へ報告の電話を入れた。
「全く反応がないと聞いていたのに、著しい反応があった。看護(医療)チームへの報告をする必要があるのではないか」と言う私に、「いったい何をしたの?反応する様なことしちゃ駄目でしょ。初日からそれじゃ困るわね」と担当者は吐き捨てる様に言った。何を言われたのか判らず「反応があるんです。神経が断裂しているから反応無いって聞いていたのに、反応があるんですよ。担当ドクターに報告しなくちゃならないと思ったんです」と繰り返す私。
「いじり回せば、反応があるのは当たり前でしょ。いい年したおばさんがカマトトぶるのは止めなさい」と言われるに至り、やっと状況が判断できた私。下半身不随の男性利用者に性的ないたずらをしたと言われていたのだ。なんてことだ!
『この事務所駄目だな。こんなんじゃ潰されるかもしれない』そう思ったのは間違いではなかった。便利に使われてヘルパーの仕事は1年で辞めることになってしまった。
今から5年前のことである。