入館時と退館時のチェックが厳しくなった話。
母が入所している特養も、人が少ないのに余計なチェックが必要になり、現場は大変。
事件前の入り口のロックは、利用者の家族に知らされていたパスワードで開く設定だった。
しかし今は、インタフォンで呼び出し、確認後に解錠して貰う方法になったそうだ。
我々は、いつも本館の事務所を通って母の居室へ向かうことにしている。
第一連絡先が良い子ちゃんになっているとはいえ、出来るだけ担当者との意見交換をしておきたいという理由である。
もちろん、本館を通っていく場合は、途中で何カ所も有人のチェックポイントがあるので、通過に問題はない。
事務所では担当者が他の利用者対応中だったため、そのまま居室へ向かうことになった。
ユニットにつくと姉が居た。行くなんて言ってなかったじゃん?まぁ良いけど。
着くと同時に、彼女の不満が炸裂した。
スタッフの手が足りないので、昼食を食べさせなきゃならなかったそうだ。
「全然反応がないからどうしようもない」と姉は言う。
でもね、反応がないと思うんだろうけど、ちゃんと反応しているよ。
目をつぶっているし、声を出さないけどね。
座位を保持しているし、まぶたが動いている。
かすかだけど、呼びかけにリアクションあるよ。
姉が「おかーさん、判る?反応してよ!」とぺちゃぺちゃ頬を叩くと、嫌そうにしかめ面する。
可哀想だから、そんなことしないでやってほしい。
無視しているのでもなく、お母さんのサインを読み取れないこちらの問題だからね!
「帰る時には、誰かに一緒に行って貰わないと出られない」と不満顔で語る。
「本館廻ったら大丈夫よ?」
「遠回りになるじゃない、バス停はそこなのに!」と言う。
本館を廻ってバス停に行こうと考えたら、5分ほど早く出たら良いだけの話だ。
スタッフの手が足りないと文句を言うのなら、そのスタッフの手を煩わせない方法を考えて協力すればいいだろうに。
脳味噌が筋肉だと、そんなことは考えられないらしい。
「しょっちゅう、パスワードを変えるからスタッフさんも大変なんだって
家族が危害を与える事はないのに、なんでパスワード変更する必要あるんだろう?」
と言う。
「あの事件がどういう風に関係するのかわかんない」と。
「あの事件は、元職員が起こしたでしょ。元職員だったら内部事情に精通しているから、
入退館の管理を変える必要があるのよ」というと、判ったか判らないのか、
「迷惑だわぁ」と言う。
しゃぁないなと思ってると、「あ、私帰るからYさん一緒に行ってくれます?」と
母のエネルギー補助ゼリーを用意していたスタッフを連れて帰って行った。
困ったモンだ。
鍵を開けに同行するスタッフに「お願いできますか」と言われたので、彼女が用意していたゼリーを食べさせた。
目を閉じてはいるが、覚醒しているのだから食べさせるのは簡単。
ものの5分ほどで完食。続いてのおやつのムースも10分もかからなかった。
飲むのを嫌がったのでちょっと時間をおいたら、コーヒー風味の高栄養ドリンクも一滴残さず摂取完了。
姉は言う。
「Nさんは乱暴だからお母さんが可哀想。食事もどんどん突っ込むし、寝ているのを無理矢理起こすし、泣いてるよ」
良い子ちゃんの食べさせ方を見たら、きっと乱暴だと言われるね。
そう見えるかもしれないけど、覚醒しているわずかの間に食べさせないと、次のチャンスはいつになるか判らないんだよ。
寝ているからと食事を後回しにしたら、栄養を取ることなくどんどん衰弱する一方になる。
薩摩の国へ連れて行った時の食事がどれほど大変だったか。
まぁ、わかんないやつには何を言っても無駄。
セキュリティを見直し中なので、まだまだ落ち着くまで時間が掛かりそう。
現場のスタッフに掛かる負担が心配である。