職場最寄りの駅を降り、エスカレーターに乗った視線に飛び込んできたビビッドなブルー。ものすごい鮮やかなブルー。12センチピンハイヒールパンプスが目の前を歩いていく。
パンプスを履いているのはシアブラックのストッキングに包まれたミニスカートから伸びた足。ついつい足下から上へ向かって視線が動いてしまう。次に目に入ったのがベージュのスカートにグレーのショートコート。装いはごく普通。と言うより地味な感じ。
あれ？ なんだろうこの違和感。
そうか。パーティドレスにならぴったりという感じのパンプスは、この風景には不似合いなんだね。アフターファイブならこうまでビックリしなかったのかもしれない。装いとのアンバランス感もはんぱ無いし。
昔、中学生だった頃。参観日に『これでもかっ！』と張り切ったおしゃれをしてやって来る、ある同級生の母親。良い子ちゃん的には本当に『これでもかっ！』としか思えなかったし、なにも参観日にあんなにおしゃれしなくてもと思ったものだった。他に着ていける場所がないんだろうか？などと心配したりして。でも、きっとそうなんだよね。他に着ていく機会がなかったんだろうなと、今なら思える。専業主婦だもん。男の子二人の家の中では女性一人だもんね。今みたいにママ友でランチ会なんてなかった頃の話だよ。
うちの母は奥様でなく『外様』だったし、着物を着る機会の多い人だったのもあり、気合いの入ったおしゃれをする場もちゃんとあった。参観日に子供が恥ずかしくなる様なおしゃれをすることもなかったけれど、機会がないとそんなことも言ってられないのかなとか思う。
で、冒頭のパンプス。あんなの履いて今からお仕事だよね？職場では履き替えるのかなぁ、それともずっと履いたまま？ 余計なお世話だろうけれど、ちっとも似合ってないよ。と思えたのだ。先にはこの時間帯に移動するとしたらオフィスしかない。絶対変だよ！
とか思うのは、どうも良い子ちゃんだけの様だ。最近はハレの日とふだんの日の区別がないみたいだね。ハレの日とふだんの日の区別がないのはつまらないのは少数派の意見になってしまったのかな。つくづくと考えてしまうあたり、おばちゃんの証拠なのかね。
